《開催レポ》奈良酒ガストロノミーディナーイベント@ホテル日航奈良(11/5開催)

日本が誇る抹茶と茶道のルーツがある奈良で、茶筅作り体験と奈良酒ガストロノミーディナー

〝日本が誇る食文化・和食。そのルーツは奈良にあり〟と、「日本の食の聖地巡礼・NARA」プロジェクトは、日本の食のルーツを知り、文化を体験できるガストロノミーツーリズムを企画。2023年度も多彩なプログラム6本が展開されています。
その第2弾は11月5日、ホテル日航奈良の羽衣の間で、ゲスト22名を迎えて行われました。今回は、奈良がルーツの抹茶と茶道に関わりのある〝茶筅〟作り体験を取り入れ、料理に奈良発祥の食文化と革新の奈良酒のコラボを盛り込みました。

10月22日に行われた第1弾同様、資料・メニューなどは日本語・英語のものを用意。通訳ガイド2人が司会や講師の言葉を同時翻訳するなど、外国人参加者にも配慮しました。

※ 本イベントは、観光庁地域一体型ガストロノミーツーリズム推進事業の実証第二弾として実施しました。日本清酒発祥の地であり、様々な日本の食文化のルーツを持つ奈良から国内外に向けて新たなNARAブランドを発信し、増え続ける訪日外国人をターゲットとして新たな商品造成と販路開拓を行うことを目的としています。

第1部 茶筅師・谷村丹後氏指導による茶筅の糸掛け体験

弘法大師が唐からお茶の種を持ち帰り、奈良の宇陀に植えてお茶の製法を伝えたのが大和茶の起源とされ、その後奈良出身の村田珠光によって生まれた〝茶の湯〟が今も伝わります。茶道のルーツも奈良にあり茶道具の茶筅も奈良時代に奈良の生駒・高山の地で生まれました。

谷村丹後氏

その高山で一子相伝の秘伝による茶筅作りを今に伝える、和北堂20代目当主の茶筅師・谷村丹後氏による茶筅作りの工程が映像とともに紹介されました。穂先を仕上げる〝味削り〟の工程では、「味削り一つで抹茶の味の良し悪しが決まります。指先の感覚に全神経を集中する、特に重要な工程です」と谷村氏。

続いて氏の指導下、めいめいが好みの色糸で茶筅の糸掛けを行いました。細い竹の穂の一本一本に交互に絹糸を絡ませていく作業です。皆さん目を凝らし真剣な表情(まさに茶筅とにらめっこ)で取り組まれていました。その甲斐あって時間内に全員が掛け終え、第2部の奈良酒ガストロノミーディナー会場への移動となりました。

第2部 奈良酒ガストロノミーディナー

乾杯に先立ち、東海旅客鉄道株式会社広報部東京広報室長の池田朋史氏、作家の寮美千子氏が挨拶に立たれました。池田氏は「俳優・鈴木亮平出演の『いざいざ奈良』キャンペーンで知られている通り〝新しい奈良〟の魅力を発掘・発信しています」と話されました。

寮氏は、「東京から奈良に来ました。奈良は面白過ぎるし、おいしいものがいっぱい。そして多くの酒蔵が元気なのがスゴイ♪」と話し、先のワークショップで茶筅作りに強い関心を抱いたと伝えられました。
池田朋史氏
寮美千子氏

蔵元トーク ~油長酒造13代目蔵主の山本長兵衛社長~
奈良は日本清酒発祥の地「実は…」

美酒美食をより美味にするため、御所市 風の森の油長酒造13代目蔵主の山本長兵衛社長から「奈良酒と菩提酛」をテーマにした話がありました。

山本長兵衛社長
まず「長兵衛」という名は、300年あまり代々襲名している名であると自己紹介、「無濾過、無加水、菩提酛造りと地域の農業との共存にこだわり、地産地消で次世代に日本酒を伝えていきたい」と抱負を語ります。

そして室町時代に奈良で日本酒が造られるようになったのは、経営難の寺院が、それまでの日常酒「どぶろく」に代わり、火入れをして日持ちする「清酒」を造って流通販売に乗せたのが始まりだと話しました。またその副産物の酒粕の有効利用として生まれたのが奈良名産の「奈良漬」だと加えました。

また本日用意した「風の森ALPHA2/風の森露葉風807/風の森秋津穂657」3種について、「地元の米・秋津穂や露葉風など米の種類と磨き度合いによる味の違いをお愉しみください」と結びました。

和食のルーツ・奈良の食材&調味料を使った料理

乾杯のお酒は「風の森ALPHA1」。アミューズプレートと共にサービスされ、奈良県観光局局長・谷垣裕子氏が、乾杯の音頭を取られました。
ホテル日航奈良の辻井料理長による料理の説明があり、『古代米(黒米)のフォアグラ入りコロッケ』、『古代チーズ「蘇」と生ハム・あんぽ柿』、『牛肉のグリル 奈良県産野菜添え ひしおソース』、『興福寺の粕汁』、『抹茶のテリーヌ』、『奈良県産ほうじ茶のプリン』と、奈良の食のルーツを随所に散りばめたものだということでした。

お酒コーナーには10種の希少酒を冷・燗で用意
テーブルを回ってのサービスも

一品ずつ運ばれてくる料理に舌鼓を打ちながら、奈良県酒造組合の多山藤樹氏と水上和之氏がサービスに回るお酒も味わい、同じテーブルになった方同士打ち解けて会話も弾んでいました。

お酒コーナーには、『風の森』、『鷹長菩提酛』に加え、先の2人が選んだ10種の希少酒も用意。熱燗での提供もあり、ゲストの皆さんは好みのお酒を選んでは料理とのマリアージュを愉しまれていました。

「ALPHA1がフルーティーで飲みやすい。シャンパンのようだ。熱燗でいただくALPHA5は、深みのあるおいしさ」とほめ、「茶筅作りが印象深い。あれがあったからこのおいしい料理とお酒の記憶がより鮮明になる」と通訳を交えて話してくださったドイツ人男性もおられました。
また「贅沢過ぎます、このプロジェクト♪」と、山本長兵衛氏のお薦めで、アイスクリームに鷹長菩提酛をかけたデザートに目を細めながら、何度もおほめくださった方もありました。
「茶筅づくり体験は、絶対人に話したくなる! 五感で楽しめました」など佳味旨味の賛辞とともに、総じて茶筅作りの感動を強調された方が多かったです。 また、3割方いらした海外ゲストの箸遣いが上手だったのは、和食が世界的に広まっていることの裏付けにも思われました。

奈良の新旧の魅力の発信を約束して終演

なお終演にあたり、ゲストの中から海外の方も含めて5名の方に感想をうかがいました。皆様それぞれに奈良の文化、伝統や食について新たな発見があったと楽しんでいただけたようです。

締めはプロジェクト実行委の川井徳子委員長からの挨拶で終わりました。川井さんは、自身のお酒との出会いと学びを『アベセデス・マトリクス―酒の未来図(酒文ライブラリー)』に由来すると話し、「神と仏が共存してきた奈良から平和を。そして日本酒、茶道など、日本の伝統文化のルーツが今でも息づく奈良。〝はじまりの地・奈良〟からその魅力を国内外に発信してまいりましょう」と結びました。

川井徳子委員長

記念エディションの茶筅・茶道具の販売
谷村氏花押入りの茶筅や意匠の猪の目茶碗

当日の「日本の食の聖地巡礼・NARA」のツアーを記念し、谷村丹後氏の「花押」入り茶筅、陶芸家・小野穣氏の猪の目(ハート型)茶碗、裏千家・後藤宗裕氏による茶筅箱のセットも展示販売され、それらの美しさに多くの方が見入られていました。

茶筅の完成品に三度目の感動!
抹茶ラテを点てるなど日常で楽しんで

第1部で糸掛けされた茶筅の仕上げは、第2部開催中に谷村氏が黙々と作業され、お開き後、出口でおみやげとして一人ひとりに手渡されました。最初に施されていた白糸とそれぞれの色糸がきれいにマッチし素適な茶筅の出来上がりに皆様再びご満悦の様子で会場を後にされました。

もちろん、「抹茶のつくり方」、「抹茶ラテ(HOT/ICE)のつくり方」レシピもお持ち帰りいただきました。日本が、そして奈良が、世界に誇る伝統工芸品が、帰宅・帰国後の日常の暮らしの彩りになることを祈念して。